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私は「金持ち父さん、貧乏父さん」を読み不動産投資を知り、会社員として働く傍ら、 札幌のマンションを一部屋買う不動産投資を行ってきました。
私は関西に住んでいて、札幌からは遠いところに住んでいます。 札幌のマンション投資の実態とその課題について、不動産投資に興味がある人の 参考になればと思い、記事を書く事にしました。 不動産投資の失敗談として読んで、笑い飛ばしていただければ幸いです。

物件の情報

物件の所在地:札幌市白石区
間取り:2DK
広さ:35.87u
交通:JR函館本線 白石駅 徒歩15分
竣工:1990年
販売価格:280万円
家賃(購入時):46000円
利回り(表面):19.7%

一見立派なマンション 部屋の様子
白石区の物件との出会いは2006年10月でした。
金持ち父さん貧乏父さんやサラリーマン大家さんとして有名な藤山勇司氏の著書を読み 不動産投資をやりたくていてもたってもいられない状態でした。

当時は勝間和代氏の「お金を銀行に預けるな」という本も出ていなかったのですが、 銀行の低金利ぶりにはかなり頭にきていて「銀行に金を預ける奴はどうかしてるぜ」とか思っていました。

それに引き換え、10%台の利回りはざらの不動産投資はとても魅力的に思えました。 だから土日になると不動産投資連合隊やathomeの様な中古物件を扱うWebサイトを 巡回しては自分でも購入できそうなめぼしい物件を探していました。

当時の自分の貯金の額は300万円程度。 不動産投資連合体には300万円以下で買える物件も載っていましたが、大抵は安い分 築35年を超えているような古すぎる物件だったり、ワンルームでユニットバスの物件だったりと 安いのだけど購入したところで将来苦労しそうな物件がほとんどでした、 そんな中で表面利回りが20%程度で築年数も16年の物件に出会ったときは「これだ!」と思いました。

発見したその直後にで不動産会社に連絡し、購入したい旨を伝えました。 不動産会社の担当者は私に「あなたは運がいい、こんなにいい物件はめったに無くてすぐに売れてしまいます」
と言い、私は既に不動産投資で成功したかのような気分でした。


■3年目までは順調だったが・・・

購入した物件は3年目までは順調でした。 入居者が住み続けている間は何もせずとも家賃が振り込まれます。 毎月4万円以上の家賃収入が通帳に印字されるのを確認しては

「やっぱ不動産投資はすごいな〜、こんなすばらしい事をなぜみんなやらないんだ?」

と金持ち父さんの気分でご満悦でした。
なんせ4万円分残業代で稼ごうと思ったら、会社でさらに20時間以上働かないといけません。 私はほぼ労力無しで収入を得続ける事ができる不動産投資の魅力にずっぽりはまってしまいました。

他にも同じような物件が無いかを探して、買ったりもしました。(この物件の件はここでは割愛します)

35歳までに不動産による年収を500万円に乗せて、会社を辞めるという妄想を掲げ、金持ち父さんまっしぐらでした。 しかし、この好調ムードも物件購入から3年ほどたった2009年8月までで終わります。 2009年9月に私の物件の住人が退去しました。 ここから一気に不動産投資のシビアな面が露呈します。

■札幌の結露で部屋の中はカビだらけ!修繕費用でボーナス一発分がふっとんだ!

不動産投資を進める本は数あれど、物件の修繕費用のような退去時のコストがどの程度かかってくるのかを具体的に語った本はありません。

不動産投資を勧める側の立場としては利回りの高さの様な不動産投資の良い面を強調し、「あなたもローンを組んでアパートやマンションを 一棟買いしなさい。」と、とにかく物件を買う事を勧めてくる様な内容の本が多いです。
ここでは2DKの部屋に7年住んだ住人が退去したあとの修繕費用にどの程度の金額がかかるのかを公開します。

【2DKマンションの修繕費用】
品名 数量 単価 金額
リビング クロス張替 天井 15.5u 1,000 15,500
26.4u 800 21,120
床CF張替 18.6u 2,200 40,920
巾木 12枚 300 3,600
洋室1 クロス張替 天井 8.8u 1,000 8,800
24.12u 800 19,296
押入 10.7u 800 8,560
床CF張替 8.5u 2,200 18,700
巾木 10枚 300 3,000
洋室2 クロス張替 天井 8.5u 1,000 8,500
24.6u 800 19,680
押入 8.9u 800 7,120
床CF張替 7.5u 2,200 16,500
巾木 7枚 300 2,100
洗面所 クロス張替 天井 2.5u 1,000 2,500
10u 800 8,000
床CF張替 2.1u 2,200 4,620
巾木 5枚 300 1,500
トイレ クロス張替 天井 2u 1,000 2,000
10u 800 8,000
床CF張替 2u 2,200 4,400
巾木 5枚 300 1,500
玄関 クロス張替 天井 1.2u 1,000 1,200
9u 800 7,200
床CF張替 一式 9,000 9,900
巾木 5枚 300 1,500
各所 枠塗装 一式 30,000 30,000
ウレタン吹き付け・防カビシート 一式 35,000 35,000
24時間強制換気器(ロスナイ2箇所) 一式 110,000 110,000
廃材処理 一式 15,000 15,000
小計 434,816
消費税 21,741
合計 456,557

ざっと45万6千円かかっています。(爆)

これは当時の僕のボーナス1回分の額に匹敵しますね。想定外の高額出費になりました。
部屋が2DKと広い分、くまなく壁紙とクッションフロア等を交換するとこれぐらい行くんです。

しかも札幌の物件は冬になると閉めっぱなしになるため大量の結露が室内に発生します。 この結露を放置しておくと↓図の様にカビで室内がボロボロになります。
カビだらけの部屋
結露対策の換気扇(24時間強制換気器)も11万円で購入したのでこれがコストを押し上げました。
最初からつけとけよって思いましたね。 結露対策を行ってはいても、カビは発生するようでこの11万円も本当に必要なのかが(?)なんですけどね。

とにかくここで言いたい事は一旦退去が発生したら多額のコストがかかる事、です。 この修繕コスト分を礼金で賄うのが通常なんでしょうが札幌の相場は礼金1ヶ月ととても低く、 オーナーが修繕費のほとんどを負担する必要があります。

札幌は不動産価格が安いため、参入が容易ですが、入居者獲得の競争は厳しいのが現状です。 礼金が低い分、修繕費用のようなランニングコストの負担が高めになる事を念頭に置いて投資を行う必要があります。 修繕を自前でやってしまう加藤ひろゆき氏の様に、自分の目が行き届く範囲に物件を買い、自前でメンテナンスしていく 方式を採らないと収益を上げるのは厳しいと思います。

■広告費大量投入しても入居者が来ない。札幌の賃貸はレッドオーシャン状態。

退去後の入居者募集が想像以上に大変でした。

6ヶ月も募集すれば入居者もみつかるだろうとたかをくくっていましたが、全然そんなことありません。

ぜんっぜん入居してくれません。僕のデータでは退去後に次の入居者が見つかるまで平均1年を要しています。 春は引越しシーズンだから引き合いが多いとか、そういう季節によって人が動くみたいな感じは全然ありませんでしたね。

春であっても夏であっても入居希望者はそんなに多くない、それが札幌賃貸の現状です。 おそらく土地が安いことに目をつけての不動産投資によるアパートやマンションが乱立している状態なのだと思います。 札幌は北海道中から人が集まっている事もあり、人口が増え続けているというデータがあるので見通しは明るいと読んだのですが、 データだけでは全然わからないものなんです。

どれだけ人口が増えていても、賃貸物件の供給が過剰だから空室も多く、空室同士の値下げ合戦の応酬が行われているのです。
家賃は投資を始めた2006年の46000円から2012年の36000円まで値下がりしました。

周辺の同ランクの物件に合わせた値付けをしないと興味を持ってもらう事すらできません。 不動産会社から入居者に物件を紹介してもらうには広告料が必要です。 同ランクの物件でも広告料金が高い物件から見込み客に紹介されてゆきます。 広告料が高い物件ほど不動産会社にとってはおいしいですからね。

この広告料も札幌では高騰しています。 私の場合4ヶ月程度の広告量を提示して、ようやく1年で入居者が見つかるといった体たらく。 ちなみに私が住んでいる西宮市では広告料は0.5〜1ヶ月程度です。需要が高い地域のため供給サイドが強気でもやっていけるみたいです。 不動産会社からも足元を見られていたと思います。

かといって空室であっても毎月の管理費用(何を管理してるの?って思います)と固定資産税は漏れなく徴収される為 空室を放置しておくぐらいであれば多少高い広告費用を支払ってでも入居者を入れたほうが得策なのです。

■家賃は値下がりしてゆくが、ランニングコストは低下しない。不動産投資はお先真っ暗なバクチ。

不動産投資を行ってみて気づいたことは入居者が入る、入らないで勝ち負けがはっきりする バクチの要素が強い事です。まるで上がるか下がるかを予測する株みたいですね。 入居者はいつ退去するかもわかりません。で、常に退去する可能性があります。

入居者が退去した場合のダメージは大変大きいです。特に札幌のように供給サイドの競争が激しく 礼金が低く設定されている地域では一旦退去が出るとそれまでに生み出した利益が一気に食いつぶされてしまいます。 物件購入時には退去された場合のコストも見込んで、シビアに値定めする必要があります。
不動産投資の難しいところは家賃は競争にのまれてどんどん低下していくのですが、 固定資産税や物件の管理コストはほぼ低下しない事です。

家賃は不動産投資開始時期から1万円程度値下がりしましたが、固定資産税は毎年同じ程度の金額が請求されます。 管理費も何を管理しているのかは知りませんが、毎月一定額が請求されます。 また、修繕費用も家賃の低下とは無関係に修繕費用の相場どおりに請求される事でしょう。
時間の経過とともに劣化して収益性は下がってゆくが、維持コストが定常的ににかかり続けるのが不動産です。
(まるで原子力発電所と核燃料みたいです)

家賃が下がりすぎるとどうあがいても黒字化することが不可能なラインに到達します。 このラインに到達するまでに物件を手放して、利益確定するのが不動産投資をうまくやる鉄則の様に思います。